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2019年3月15日、中国で新しい外商投資法[外商投资法]が成立した。外商投資法は2020年1月1日から施行されている。この新しい法律の意義を認識するため、まず、それを比較法的な観点から見てみたい。
1.1 3つの外資規制モデル
首都経済貿易大学法学院の焦志勇教授によると:
世界には3種類の外商投資の立法モデルがある:
第1に、「統一システムモデル」とは、外商投資に特別な規定を設けず、外国からの投資に関連する国内法を直接適用するモデルをいう。現在、市場経済を実行している西側先進国では、このモデルが一般的に採用されている。外国投資家は、受入国での投資に国民待遇を享受し、受入国の法律は投資分野、投資比率、投資期間、株式移転、税務、事業運営等につき一般に制限を設けておらず、外商投資の法律関係は国内法の適用によって規律される。外国投資に適用される法律は、概ね国内投資にも同様に適用される一般的な法律である。これらの国家は外国投資家の投資・運用過程における独占禁止や環境保護[1]に関する法規範の策定に注力している。
第2に、「法典システムモデル」、すなわち、外国投資に関する法規範を、統一された外国投資法典にまとめ、外国投資関係を調整するための基本法とするものである。このような国の例としては、チリ、エジプトやインドネシアなどである。これら市場経済を実行している発展途上国において、外商投資法典を制定する目的は、民族産業を保護し、国家主権を守り、外商投資を国内の経済発展のニーズに合致させることにある。これらの国は、外商投資の審査・承認、外国為替管理、徴税等に関する法規制の制定に注力している。
第3に、「二重システムモデル」とは、統一された外国投資法典は制定せず、外国投資に関する専門の法令や行政規則をいくつも制定し、その基礎の上に、その国の外商投資法制度の基本的枠組みが形成される。この立法モデルは、通常、計画経済を実行する社会主義諸国にみられる。イデオロギーの違いや経済制度の違いなどの理由から、その外国人投資家の渉外性ゆえに、調整対象が同種のもの―すなわち企業でありながら、国が所有制度の違いに応じて二種類の異なる法令を制定して調整するのが、この立法モデルの顕著な特徴である。外商投資活動の規制のため、外商投資企業の審査・承認、登記、土地利用、徴税、財務会計、労務管理、財務管理、輸出入に関する一連の行政法規が制定され、それにより外商投資の法律制度が構成される[2]。
[1] 「統一システムモデル」の国家では、環境保護よりもむしろ、特に近年では、国家安全保障の審査により焦点を当てられていると言える。例えば、米国における対米外国投資委員会による安全保障の審査や、日本の外国為替および外国貿易法に基づく審査に伴う事前届出手続きなどが挙げられる。
[2] 焦志勇、《中国外商投资法新论》84-85 (2010)、对外经济贸易大学出版社