ブログ

3.4.5 (e)’ 外貨送金

👉目次へ

外為の管理は、外国為替の受領と支払い、売却と購入、債権債務と送金および国際決済、外国為替のレートおよび外国為替市場に関して、通貨・金融当局または中央政府によって授権されたその他の機関によって課せられるコントロールである。

改革開放政策の実施前は、中国の外為管理は非常に厳格であった。政府は外国貿易と外為の事業を管理し、外貨の受領と支払いは政府による強制力ある計画の管理下にあった。受領した外国為替はすべて政府に売却する必要があり、外国為替の使用は強制力ある計画に従って割り当てられていた。中国では、海外からの借り入れは通常は許可されず、民間企業や個人による海外からの投資は受け入れられていなかった。人民元の為替レートは、決済目的でのみ使用されていた[1]

改革開放の初期には、一般に、中国の外商投資企業に関する法律は、企業が自力で外為の均衡を維持することを要求していた((a-2)外為均衡の要求)。当時、中国の外貨不足のために、中国が外資を導入するにあたり、外貨の流出を抑制しなければ、外貨準備に大きな圧力がかかることになりかねかなった。

これは当時の市場構造によるものであった。当時、外商投資企業はしばしば生産のために原材料を輸入する必要があり、生産した製品は主に現地市場に供給されていた。そのため外国為替の流出は避けられなかった。そこで政府は、法律により直接、外商投資企業に外為の均衡を維持することを要求したのであった。

一方では、外商投資企業は外為口座を開設することにより外貨収入を完全に独立して管理することが認められたが、企業は日々の外為のニーズを満たすために自身の外貨収入を使用する必要があったので、外商投資企業の送金は必然的に制限された。他方では、政府は企業が外為市場で外貨を購入するための市場参入資格試験も実施することで、外貨の購入も制限した。

1979年に設立された国家外貨管理総局(SAFE)は、中国の外国為替管理を担う機関であり、中国と他国との間の国境を越えた資金の流れを規制している。

1990年代後半までは、外商投資企業による中国からの輸出管理の厳格さは、輸出資産の種類の制限と輸出手続の煩雑さに現れていた。実際、歴史のこの段階においては、さまざまな外為口座の開設、予備費用口座への資金の入力と振替、外為の支払いと決済、外商投資企業の増資または減資、外国投資に関連する外国為替取引 外国投資企業の資本金、特別な目的のための資本取引settlement of capitalなどは、事前にSAFEによって許可または承認される必要があった。

4.3で見るように、中国のWTO加盟の時点で、(a-2)’の外為均衡要求は廃止された。

しかし、歴史的観点から見ると、外為管理或いは外為均衡の要求は、改革開放の初期段階で中国の国際収支を安定化させるのに大きな役割を果たした[2]

外為管理規則[外汇管理条例]は、1996年に国務院によって公布され、2008年に改正された。これは、外為規制の原則とシステムを定めた基本的な行政規則である。

中国における同規則に基づく外貨管理の原則は、現在の項目の決済は基本的に無制限である(提出書類などの形式が満たされている場合、経常項目の決済はSAFEの許可なしに可能)のに対し、資本項目の決済は原則的に制限されるというものである(段階的な規制緩和はあるが、原則としてなおSAFEの許可が必要である)。

このため:

通常の業務過程における国際支出のカテゴリー内での外為取引の決済手続(例えば、商品やサービスの国際貿易からの支払いと受領、外貨建て融資の利息の支払い(ただし元本の返済は不可)、外商投資企業からの配当の本国への送金)、経常勘定に該当するものとされ、また資本をする組成する目的での外為取引の決済手続(すなわち、外商投資企業への出資、融資、証券投資、外商投資企業のための保証など)は、資本取引に該当するものとされ、別々に管理される。

本来、金(かね)に色はついていない。ではそのような金にどのように色をつけているのであろうか。その答えは、銀行口座の管理である。

中国の銀行口座の種類は細かく分かれている。

原則自由の経常項目と原則制限の資本項目では、外貨管理の原則が大きく異なっている。そのため、銀行口座の管理においても経常項目の口座と資本項目の口座を明確に分けており、相互の振替は禁止されている。資本項目口座の外貨を経常項目外貨口座に振替えることができたら、管理ができなくなってしまうからである。このように、資金の出し入れを明確に区分することでお金の種類(来源)を明確に分けている。

ちなみに、資本項目の口座は資本金口座、借入金口座、外債口座などのように資金の来源によって分かれている。

経常項目は自由ということが原則になっているので、経常項目外貨口座の中の資金は、自由に人民元に換金できるし、外貨のまま保有することもできる。また、法的に認められている使途であれば、口座からの支払いができる。一方、資本口座の場合は管理が厳格になる。資金項目口座の資金は、資本金の払込や借入で調達した資金ではあるが、これは、企業の経営範囲に合致した使途にしか利用できない[3]

👉6.6 8.2


[1] Yunchuan Jing, Foreign Investment: Law and Practice in China 78-9 (2013) Beijing: Law Press参照

[2] 孔庆江他,<《中华人民共和国外商投资法》解读> (2019) 89-93, 法律出版社 参照

[3] 水野真澄, 中国ビジネス担当者マニュアル ステップワン 78-80 (2015)チェイス・チャイナ参照

関連記事

  1. 8.3 強制技術移転の禁止(外商投資法第22条)
  2. 第8章 投資保護(外商投資法第3章)
  3. 10.7 SCSが実際にどのように作用するか
  4. 10.3 信用中国
  5. 3.4.2.1 (b-1)’ VIE
  6. 9.5 国家安全審査(外商投資法第35条)
  7. 5.8 (f)’ M&A規制:M&A規定の導入
  8. 2.2 改革開放の40年間を四分割
PAGE TOP