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4.5 WTO議定書による(g)’ 強制技術移転停止の要求

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改革開放の初期の強制技術移転の問題については、3.4.7でみた。

中国は、WTO加盟議定書の第7条(3)で次のように述べている。

・・・中国は、国および地方自治体による輸入許可、輸入割当、関税率割当、または輸入のためのその他の承認手段、輸入または投資の権利の付与をするのに、以下を条件としないことを保証する:当該製品の競合する国内生産者が存在するか否か; ローカルコンテンツ、オフセット、技術移転、輸出実績、中国での研究開発の実施など、あらゆる種類の実績要求の充足。

ここで重要なのは、「…投資の権利の付与をするのに」、「技術の移転」を「条件と」することがあってはならないということである。

また、中国は、2007年の中韓投資協定、2012年の日中韓投資協定、2015年の中韓自由貿易協定など、関連する国際協定で同様の約束をしている[1]

中国の立場は、この約束を誠実に果たしてきて、関連する法律や外国投資の許認可に関する規制には、技術の移転を明示的に要求するものはないというものである。

技術管理条例実施細則(実施細則)は廃止され、技術輸出入管理条例に変更された[技术进出口管理条例](2001)。

次の表は、実施細則と技術輸出入管理条例を比較したものである。左の2つの列は、3.4.7(g)の強制技術移転で見た「中国法のもとでの内国および外国の技術の移転」の表のものと同じである。

中国法のもとでの内国および外国の技術の移転

 実施細則技術輸出入管理条例
持分権新しく開発された技術の単独所有権は中国の企業に与えられる。外国の当事者は、外国のライセンサーが直接開発していない技術に対しては使用料を支払う必要がある。第27条:技術輸入契約の有効期間中、技術の改善に関する権利は、改善を行った当事者に帰属する。
利用権外国の当事者が中国の当事者との技術移転契約において課すことを禁止されている9つの「不当な制限」のリストが含まれている。[2]第29条には、外国の当事者が中国の当事者との技術移転契約において課すことが禁止されている7つの「不合理な制限」[3]のリストがまだ含まれている。
性能保証およびフィージビリティ・スタディ外国のライセンサーは、性能保証をすることが求められる(困難な制限が多いにもかかわらず)。 フィージビリティ・スタディは、契約の承認を受けるのに不可欠である。第25条は、技術が完全、正確、有効であり、契約で合意された目標を満たしていることの保証を要求している。 第24条第2項では、他人の合法的利益が侵害された場合、責任はライセンサーが負うものとされている。
営業秘密の保護「契約の交渉と承認の過程で、ライセンシーたる者は、別の機密保持契約が締結されていない限り、外国のテクノロジーの秘密を保持し、または使用を控える義務はない」。 秘密情報が横領された場合、責任を負う可能性があるのは、従業員ではなく、企業である。 技術ライセンスは通常、5〜10年後または契約の終了時に期限が切れるが、中国のパートナーは技術を自由に無制限に使用できるようになる。第26条は、技術輸入契約の譲渡人またはライセンサーおよび譲受人またはライセンシーが、契約で合意された機密保持の範囲および期間に従って、公開されていない技術に関する秘密情報の機密を保持する義務を負うことを規定している。機密保持期間中に、技術に関する機密情報が、その情報の機密を保持する義務を負う当事者の帰責事由によらずに、一般に公開された場合、機密保持の当事者の義務は直ちに終了するものとされている。

表を見ると、技術輸出入管理条例では、営業秘密の保護に関する規定が改善されたことがわかる。しかし、持分、利用権、性能保証などの規定の改善はまだ不十分と言えよう(ただし、技術移転は明示的には要求されていない)。

中国の立場からすると、中国の強制技術移転に対する外国当事者の批判は、WTO議定書の下で中国が約束した範囲を逸脱したものと映るが、外国当事者による批判は止まなかった。

👉3.4.7 6.9 8.3


[1] (孔)

[2] レポートの脚注70によると、これらの制限の中には、「受入側の販売チャネルと輸出市場を不当に制限するもの」および「契約終了後の輸入技術の受入側による使用を禁止するもの」があり、国際的な法的貿易慣行の観点からは、どちらも差別的と見なされる。

[3] これらの制限の中には、「受入側の販売チャネルと輸出市場を不当に制限するもの」および「受入側またはライセンシーに技術の改善またはそのような改善された技術の使用を制限するもの」がある。ただし、実施細則にあった「契約終了後の輸入技術の受入側による使用を禁止するもの」という規定はなくなった。

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