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参入前国民待遇+ネガティブリストの管理モデルが世界から外資を誘致するための主要な方式になるにつれて、クロスボーダー投資では直接投資または合併の方法が主にとられることが多くなってきた。外資のM&Aによる、自国の国民経済の正常な運営に対する不当な干渉をどう防ぐかは、各国の益々の関心事となり、国家安全審査制度は外資参入規制体制の中の重要な「防衛線」となっている。
中国は、対外開放を推進しつつ、国家安全を維持するため、国際実務を参考に、2011年に外国投資者投資者による域内企業の合併買収の安全審査制度実施についての規定[关于建立外国投资者 并购境内企业安全审查制度的通知](国办发[2011]6号)と、外国投資家による境内企業の買収に係る安全審査制度の実施に係る規定[实施外国投资者并购境内企业安全审查制度的规定]を公布し、外国投資家による国内企業のM&Aのための安全審査システムを確立した。注目すべき点は、それらは合併と買収だけが対象となっており、グリーンフィールド投資は対象外とされていたことである。
独占禁止法のルールの確定性、前置性、簡潔性に比べ、国家安全審査は、より柔軟で、曖昧性、自由裁量権がより大きいなどの特徴があるが、「参入前国民待遇+ネガティブリスト」をより適切な「リスク・コントロール・メカニズム」とすることに資する[1]。
M&Aの安全審査の対象には以下が含まれる:
外国投資家が軍事および軍事関連産業、軍事・センシティブな軍事施設周辺企業、並びに国防・安全に関するその他の企業を合併・買収する場合;外国投資家が国内の国家安全に関する重要農産品、重要エネルギーおよび資源、重要インフラ施設、重要運輸サービス、基幹技術、重大装備製造等の企業を合併・買収し、かつ実質的支配権が外国投資家により取得される可能性がある場合(国办发[2011]6号第1条第1項)。
M&Aの安全審査についていえば、外国投資者による実質支配権の取得とは、外国投資者が買収を通じて国内企業の支配株主または実質支配者になることを指し、次に掲げる場合を含む:(1)外国投資者、その持分支配親会社およびその持分支配子会社が買収後に保有する持分の総額が50%以上の場合;(2)複数の外国投資者が買収後に保有する持分の総額が50%以上の場合;(3)外国投資者が買収後に保有する持分の総額が50%未満であるが、その保有する持分により有する議決権が株主会または株主会、董事会の議決権が株主会または株主会、董事会等の決議に重大な影響を与えるのに十分な場合;(4)その他国内企業の経営決定、財務、人事、技術等の実質支配権の外国投資者への移転を招く場合。
M&Aの安全審査で考慮すべき要素には、以下の点のM&A取引の影響が含まれる:製造とサービスを含む、国家安全保障;防衛分野の能力;国家経済の安定;社会秩序;国家安全保障に関連する主要技術の研究開発能力。
自由貿易試験区が設けられると、2015年に自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法を公布することに関する通知[国务院办公厅关于印发自由贸易试验区外商投资国家安全审查试行办法的通知](国弁発[2015]24号)が発せられた。これは、グリーンフィールド投資と合併・買収の双方に適用されるが、自由貿易試験区域内でのみ適用される。
国弁発[2015]24号のもとでは、国家安全審査は、総括的原則としては、国家安全、国家安全保障能力に影響するあるいは影響する可能性があり、センシティブ投資主体、センシティブ買収対象、センシティブ産業、センシティブ技術、センシティブ地域に関連する外商投資に対して行われる。
安全審査範囲は、外国投資者の自貿試験区内における軍需関連工事、軍需関連の付属工事とその他国防安全に関連する領域、および重点、センシティブ軍事設施周辺地域への投資;外国投資者の自貿試験区内における国家安全に関連する重要農産品、重要エネルギーと資源、重要インフラ、重要運輸サービス、重要文化、重要情報技術生産品とサービス、重要技術、重大装備製造等の領域、それを通じて投資企業の実質コントロール権を取得する投資、である。
審査内容には、以下を含む:(一)外商投資の国防に対する安全、国防に必要な国内商品生産能力、国内サービス提供能力と関連設施に対する影響;(二)外商投資の国家経済安定運行への影響;(三)外商投資の社会基本生活秩序への影響;(四)外商投資の国家文化安全、公共道徳への影響;(五)外商投資の国家インターネット安全への影響;(六)外商投資の国家安全に関連する重要な技術研究開発能力への影響。
問題は、国办发[2011] 6号と国弁発[2015]24号のもとで、国家安全審査制度による制約と情報開示を行う企業と投資家の責任が、十分に明確になっていないことであった。
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[1] (宋)