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外商投資法第4章は投資管理と題されている。
9.1 規制制度の再編(外商投資法第28条および第29条)
外商投資法第28条は以下のように定める:
外商投資参入ネガティブリストに規定する投資禁止の分野について、外国投資家は投資してはならない。
外商投資参入ネガティブリストに規定する投資制限の分野について、外国投資家が投資する際はネガティブリストに規定する条件に合致していなければならない。
外商投資参入ネガティブリスト以外の分野については、内資外資一致の原則に基づき管理を実施する。
外商投資法第28条は、3.4.2、4.4、および6.2で見た(b)’外資規制に関するものである。
それは外資参入ネガティブリスト制度を規定するとともに、外資参入ネガティブリストに含まれない分野を特定し、内外法人平等待遇の原則に基づいた投資管理を実施するものである。
第28条は、外商投資法第4条に規定された原則の具体的な実施形態である[1]。
外商投資法第29条は以下のように定める:
外商投資が投資プロジェクトの認可、届出の手続きを必要とする場合、国の関連規定に基づき執行する。
外商投資法第29条は、3.4.3、5.6、および6.3で説明した(c)’会社の設立および変更に関する厳格な手続きに関するものである。
それは国家発展改革委員会等により行われている外商投資プロジェクトの承認・届出システムを規定している。
3.4.3で見たように、要するに、外商投資審査プロセスには、発展改革委員会の「プロジェクト審査」から始まり、次いで商務部の「外商投資審査」、最後に国家工商総局の「開業審査」(営業許可証の発行)があった。
外商投資法実施条例によって、このプロセスには根本的な変化が生じた。外商投資法第28条、第29条を実施するため、外商投資法第7条の基礎の上に、外商投資と外商投資企業の監督管理体系を再構築し、各部門の機能を明確にした。
国家発展改革委員会の機能
外商投資参入ネガティブリストを提案し(国務院に報告するかまたは承認を得て発布する)(第4条)、奨励外商投資産業カタログを制定し(国務院に報告するかまたは承認を得て発布する)(第11条[2])、総合的な外商投資ガイドラインを作成する(第20条[3])
外商投資の投資プロジェクトの審査、届出を行う必要がある場合、国務院および国務院投資主管部門の関連規定に従い執行する(第36条[4])
商務部の機能
外商投資参入ネガティブリストを提案し(国務院に報告するかまたは承認を得て発布する)(第4条)、奨励外商投資産業カタログを制定し(国務院に報告するかまたは承認を得て発布する)(第11条)、総合的な外商投資ガイドラインを作成する(第20条)。
外商投資企業の苦情処理メカニズムを確立し、苦情処理メカニズムの日常業務を担当する(第29条)。
外国投資家または外商投資企業が企業登録システムおよび企業信用情報開示システムを通じて届出た投資情報(第38条[5])を受け付け、外商投資情報報告の内容、範囲および報告の頻度を確定する(第39条[6])
外商投資情報の保存・管理制度を確立し、健全化する。
市場監督管理総局(SAMR)[7]
外商投資企業の登録の手続きを担当(第37条[8])し、外商投資参入ネガティブリストに規定された株式比、マネジメント等の制限の要求に適合しているかどうかを審査し(第33条[9])、国務院商務主管部門と連携し(第38条)、外商投資情報報告の内容、範囲および報告の頻度を確定する(第39条)。
以上の分類から分かるように、外商投資企業実施条例は基本的に国家発展改革委員会に外商投資審査認可の機能を与えている(第二次審査は国家市場監督管理総局によって補充されているが、再審査する必要はない)。企業設立審査認可の機能は国家市場監督管理総局に属し、商務部は外商投資審査と企業設立審査にもはや参与しない。外商投資企業法と外商投資企業法実施条例から商務部が情報の報告と管理機能、苦情処理メカニズムおよび外商投資企業法違反の処分権を与えられたことから分かるように、事前審査・承認/監査機能を解かれた後、商務部は事後監督管理機能を重視し、外商投資企業の行為の監督管理部門となる。この変化は効果的に現行の外商投資監督管理体制の不十分なところを解決し、外商投資管理体制を向上させる[10]。
この商務部の役割の変化は、「参入前監督管理」から「参入中監督管理、参入後監督管理」への転換を示している。
[1] 外商投資法第4条 国は外商投資に対し参入前内国民待遇およびネガティブリストによる管理制度を実行する。
前項にいう参入前内国民待遇とは、投資参入の段階において外国投資家およびそれの投資に対し自国の投資家およびそれの投資を下回らない待遇を与えることを指す。
前項にいうネガティブリストとは、国が規定する特定分野において外商投資に対し実施する参入特別管理措置を指す。国はネガティブリスト対象外の外商投資に対し、内国民待遇を与える。
ネガティブリストは国務院が公布もしくは公布を批准する。
中華人民共和国が締結もしくは参加する国際条約、協定において外国投資家の参入待遇に対しさらなる優遇規定がある場合、関連規定に基づき執行することができる。
[2] 外商投資法実施条例第11条 国は、国民の経済社会発展の必要性に基づき、外商投資奨励産業目録を制定、外国投資者の投資を奨励して導く特定の業種・分野・地域を列挙する。外商投資奨励産業目録は、国務院投資主管部門が、国務院商務主管部門等の関連部門と共同で制定し、国務院への承認の申請後に、国務院の投資主管部門左商務主管部門が公布する。
[3] 第20条 関連主管部門は、外商投資ガイドラインを策定・公布し、外国投資者と外商投資企業へサービスと利便性を提供するものとする。外商投資ガイドラインは、投資環境の紹介、外商投資事務手続取扱ガイドライン、投資プロジェクト情報、関連データ情報等の内容を含み、かつ、遅滞なく更新されるものとする。
[4] 第36条 外商投資は、投資プロジェクトの許認可・届出を取り扱う必要がある場合は、国の関連規定に従って執行する。
[5] 第38条 外国投資者または外商投資企業は、企業登記システムおよび企業信用情報公示システムを通じ、投資情報を商務主管部門へ報告するものとする。国務院の商務主管部門と市場監督管理部門は、関連業務システムの連結と業務の連携を遂行し、外国投資者または外商投資企業の外商投資情報の申告のために指導を提供するものとする。
[6] 第39条 外商投資情報報告の内容、範囲、頻度および具体的な流れは、国務院商務主管部門が、国務院市場監督管理部門などの関係部門と共に、確かな必要性の存在・効率性・利便性の原則に従って確定し、公布する。商務主管部門その他関連部門は、情報の共有を強化するものとし、部門聞の情報共有を通じて取得することのできる投資情報は、その申告を外国投資者または外商投資企業へ重ねて要求してはならない。
外国投資者または外商投資企業が報告する投資情報は、真実・正確・完全であるものとする。
[7] SAMRは2018年3月に政府再編計画イニシアティヴにより成立したもので、国家工商総局(SAIC)と中国食品薬品監督管理局と国家品質監督検査検疫総局の機能を統合している。
[8] 第37条 外商投資企業の登記登録は、国務院市場監督管理部門またはその授権を受けた地方人民政府の市場監督管理部門が、法により取り扱う。国務院市場監督管理部門は、その授権する市場監督管理部門の名簿を公開するものとする。
外商投資企業の登録資本は、人民元を用いて表示することができ、かつ、自由に両替することのできる貨幣を用いて表示するとともできる。
[9] 第33条 ネガティブリストに投資の禁止が規定されている分野において、外国投資者は、第四章投資管理|投資してはならない。ネガティブリストに投資の制限が規定されている分野において、外国投資者が投資を行う場合は、ネガティブリストに定められている持分に対する要求、高級管理職員に対する要求などの制限的な参入特別管理措置に適合しているものとする。
[10]图解金融, <外商投资监管大变局!一文看懂外商投资法实施条例> (2019), http://baijiahao.baidu.com/s?id=1649286703091117328&wfr=spider&for=pc (last visited Dec 12 2019)