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「VIE」とは、中国で設立され、その株式/持分の全部または一部をオフショアの外国会社(「オフショア持株会社」)に保有された企業(「外商独資企業」=WFOE)が、中国の外商投資制限/禁止分野で事業を行うための許認可を有する中国の事業会社(「対象会社」=VIE)に対して、株式/持分保有によってではなく、各種契約によって支配を及ぼす投資形態である。中国の内資企業にとっては、通常はVIEを用いる目的は、それらを国際株式市場に上場できるようにすることにある。
VIEは、外資規制の副産物と言える。
VIEは、ネット産業、金融、教育などのサービス産業から、不動産、鉄道、鉱業まで、さまざまな事業分野で活用されている。
また、新浪、百度、捜狐など中国の大手インターネット企業も、VIEを海外上場させている。
ネット産業については、本来、経営性ICP(Internet Contents Provider)許可証が必要となる。しかし、実際には中国国外の資本が入った外資企業に経営性ICP許可証が発行される例は極わずかである。
Variable interest entities(VIE)という言葉は、FASB Interpretation No. 46R: Consolidation of Variable Interest Entities (FIN 46R)に由来する。FASB InterpretationはUS GAPPの一部であり、VIEは会計原則の産物である。FIN46Rはエンロン事件への反省によって採られたルールで、2000年代初めの企業の危機の原因となった、オフバランス・シート・エンティティの使用を禁止することを目的としたものであった。FIN46Rは、特定の企業をどのような場合にグループの連結財務諸表に含めるべきかについてのルールを定めた。
インターネット分野の中国の民間企業が2000年代初頭に上場を目指し始めたとき、すぐに大きな問題に直面した。インターネット分野への外国からの投資は禁止されていたので、海外での株式売却はできなかった。当時中国の民間企業が中国で上場することは認められていなかったため、上海と深圳の取引所は、その代替とはならなかった。そこで、起業家は、ケイマン諸島などにオフショア企業を設立して、そのオフショア企業をNASDAQに上場させる計画を立てた。しかし、海外に上場するためには、オフショア持株会社は、実際に事業を営んでいる中国企業の収益や資産を、連結財務諸表に取り込めなければならなかった。しかし、オフショア持株会社は、これらの会社の株式を所有してはいなかった(そもそも所有することができなかった)ため、会計規則からするとそのような取り込みは不可能なように思われた[1]。
優秀な会計士たちは、中国の内資企業を意図的にVIEにするという、オフバランスシート会計に狙いを絞った、発達中の会計原則を逆手に取るアイデアを考え出した。
オフショア持株会社自体は、通常、事業を行っておらず、収益も資産もない。その結果、それ自体はNYSEやNASDAQといった国際的に人気のある海外株式市場に上場することはできない。
しかし、中国の内資企業がFIN 46Rの下でVIEと判断された場合には、連結により当該VIEの利益および資産を取り込むことが可能となる。これにより、海外持株会社を当該市場に上場することが可能となる。
中国の内資企業が次のいずれかまたは両方の特徴を有する場合には、VIEとされる:
1.リスクにさらされている出資が、追加の劣後的な財務支援(これは事業体の期待損失の一部または全部を吸収する、その他の利害当事者を通じてなされる)なしには、事業体が活動を行うための資金を調達するのに十分ではない。
2.その株式/持分保有者である中国人投資家が、企業支配力の本質的な特徴である、次のいずれかを欠いている:
a.議決権または類似の権利を通じて、企業の活動についての意思決定を行う、直接または間接の能力
b.企業の予想損失が実現した場合、その損失を吸収する義務を負っており、これにより、企業は、その活動に資金を供給することが可能になること
c.企業の予想利益が実現した場合、その利益を享受する権利を有しており、それにより予想損失を吸収するリスクが補填されること[2]
VIEスキームでは、中国の内資企業が事実上(外商独資企業法により直接的に、またはオフショア持株会社により間接的に)支配下にあることを確保するために、様々な契約が立案・締結され、たとえ持株/保有関係がなくても、VIEとして連結することができ、経済的利益を最大化することができる。
VIE構造で用いられる典型的な契約は以下のようなものである:
外商独資企業法と中国人株主/持分権者との間の融資契約、外商独資企業法と中国人株主/持分権者との間の株式質権契約(融資契約その他の契約の債務の担保として株式が担保として供与される)、外商独資企業法と中国人株主/持分権者との間のコールオプション契約(中国内資企業の売却に関するもの)、外商独資企業法と中国内資企業との間の技術サポート契約、外商独資企業法に対する委任状(中国人株主/持分権者が外商独資企業法に全ての株主権の行使を授権するもの)。
[1] Paul Gillis、The emperor’s new suit: VIEs in China (2011) https://www.chinaaccountingblog.com/weblog/the-emperors-new-suit-vies-.html
[2] FASB、CONSOLIDATION OF VARIABLE INTEREST ENTITIES—AN INTERPRETATION OF ARB NO. 51 Summary (2003) https://www.fasb.org/summary/finsum46.shtml